ジャングリア沖縄の親会社は、開業後初めての決算で173億円余りの最終赤字になりました。赤字の大部分は、パークを運営する子会社の株式の評価損です。
子会社の運営会社も約89億円の最終赤字でした。来場者が見込みの150万人を大きく下回ったことが、その土台にあると報じられています。
この記事では、赤字の中身を報道で分かる範囲で整理します。そのうえで、赤字の背景にある4つの要因を筆者の見立てとして考えます。
- ジャングリア沖縄の173億円赤字とは?報道の要点
- 173億円の中身は?子会社株式の評価損と運営会社の89億円赤字
- 要因1:ジャングリア沖縄の来場者は約100万人、見込み150万人に届かず
- 要因2:沖縄本島北部の立地は旅程に組み込みにくい
- 要因3:チケット代と移動を合わせた負担に、体験の量が見合わなかった
- 要因4:総事業費約700億円と融資366億円、開業前から続く負担
- ジャングリア沖縄は閉園・倒産する?30億円のつなぎ融資とスポンサー探し
- ほかのテーマパークと比べると?USJ・ハウステンボス・レゴランドの歩み
- ジャングリア沖縄の今後は?筆者としての考察と見通し
- まとめ:ジャングリア沖縄の173億円赤字は「集客不足×重い固定費」
- よくある質問
ジャングリア沖縄の173億円赤字とは?報道の要点
2026年9月23〜24日にかけて、NHK、沖縄タイムス、日本経済新聞などが、ジャングリア沖縄の親会社が173億円余りの最終赤字になったと相次いで報じました。
赤字を出したのは、ジャパンエンターテイメントホールディングス(JEHD)です。対象は、2026年6月までの1年間の決算です。
JEHDの子会社で、パークを運営しているのが株式会社ジャパンエンターテイメント(JE)です。JEの筆頭株主は、森岡毅さんが率いるマーケティング会社の株式会社刀と報じられてきました。
ジャングリア沖縄は、今帰仁村と名護市にまたがる場所に2025年7月25日に開業しました。今回の決算は、開業からほぼ丸1年の成績表といえます。
関係する数字は、会社と時点がばらばらです。混ざらないよう、表に整理しました。
| 項目 | 会社 | 時点・期間 | 数字 |
|---|---|---|---|
| 最終赤字 | 親会社JEHD | 2026年6月期(開業後) | 173億円余り |
| 最終赤字 | 運営会社JE | 2026年6月期(開業後) | 約89億円 |
| 純損失 | 運営会社JE | 2025年6月期(開業前) | 50億9800万円 |
| 純資産 | 運営会社JE | 2025年6月末 | 251億3400万円 |
| 来場者数 | パーク | 開業から1年間 | スパ込み約100万人 |
| 売上高 | パーク | 開業から1年間 | 100億円超の見通し |
| 当初の来場見込み | パーク | 開業から1年間 | 150万人 |
| シンジケートローン | 運営会社JE | 2022年8月 | 366億円 |
開業前の50億9800万円は2025年10月の琉球新報の報道、純資産も同じ決算時点の数字です。
今回の173億円とは、会社も期間も違います。足し合わせて「赤字の合計」とするのは正確ではありません。
173億円の中身は?子会社株式の評価損と運営会社の89億円赤字
報道によると、親会社の173億円の主な原因は、子会社JEの株式を評価し直したときの損失です。
JEが約89億円の最終赤字になりました。そのため、親会社が持つJE株の価値を帳簿の上で大きく引き下げた、という仕組みです。
ここは誤解されやすい点です。173億円という現金が、1年間にパークから出ていったわけではありません。
パークの事業としての実際の損失に近いのは、JEの約89億円のほうだと私は考えています。
では、JEの89億円は何から生まれたのでしょうか。費用の詳しい内訳は、報道では明らかになっていません。
ここからは、前提を置いた筆者の簡単な試算です。
- 売上を100億円、赤字を89億円とすると、費用と損失の合計は約190億円になります
- 総事業費約700億円のうち、仮に500億円分の建物・設備を20年で償却すると、減価償却費は年に約25億円です
- 融資366億円に仮に年2%の利息がかかると、支払利息は年に約7億円です
この仮定だと、償却と利息を除いても150億円前後の費用が残ります。人件費や運営費、広告費、保守費などがここに入ります。減損などの特別な損失がある可能性も否定できません。
つまり、固定費の重さに対して売上が大きく足りなかった、という構造が見えてきます。数字は仮定なので、正式な内訳は今後の開示を待つ必要があります。
要因1:ジャングリア沖縄の来場者は約100万人、見込み150万人に届かず
開業から1年間の来場者はスパ込みで約100万人でした。沖縄タイムスによると当初見込みは150万人で、約50万人足りなかったことになります。
1日あたりでは約2700人
報道によると、1日あたりの来場者は平均で約2700人でした。1000人ほどにとどまる日も多かったとされています。
売上100億円超の見通しと合わせると、施設の規模に対して毎日の来場者が少なすぎたことが、赤字の最も大きな土台だと考えられます。
後半の半年は約35万人
開業から半年の来場者はスパ込みで約65万人でした。単純に差し引くと、後半の半年は約35万人になります。
後半には冬から春の閑散期が入ります。これだけで「人気が落ちた」とは言えません。
ただ、開業の話題性に頼れない時期の集客が弱かったことは、数字にも表れているように見えます。

要因2:沖縄本島北部の立地は旅程に組み込みにくい
ジャングリア沖縄のお客さんは、多くが県外からの旅行者です。那覇空港から北部まで移動し、限られた旅の日数の中で半日以上をあてる必要があります。
東京や大阪のパークなら、近くに住む人が週末に日帰りで何度も訪れます。ジャングリアには、その「地元の常連」という支えが入りにくい立地です。
沖縄には海やビーチ、美ら海水族館、離島めぐりなど、魅力的な選択肢がたくさんあります。
ジャングリアが競っている相手は、ほかのパークというより「旅行者の限られた時間」そのものだと私は考えています。
ネット上でも「沖縄では海で過ごしたい」という声が目立ちました。施設の良し悪しより、沖縄旅行の過ごし方との相性の問題といえそうです。
要因3:チケット代と移動を合わせた負担に、体験の量が見合わなかった
旅行者が払うのは、チケット代だけではありません。レンタカー代、場合によっては北部での宿泊費、そして丸1日という時間も一緒に払っています。
開業当初、1人あたりが1日に体験できたアトラクションは平均2.3個でした。運営会社が1周年に合わせて公表したデータです。
同じ料金でも、体験できる数が少なければ「お得さ」は小さく感じます。価格の問題は、値段そのものより「1日で得られる体験の量」の問題でもあったと私は見ています。
開業直後はSNSで待ち時間への不満が広がりました。最初の数か月でついた印象は、あとから改善しても消えるまでに時間がかかります。
1周年の発表によると、1人あたりの体験数は4.5個に増え、待ち時間は開業当初の約5分の1に短くなりました。パーク満足度も、開業月の69.2%から2026年5月の調査では89.2%に上がっています。
改善は確かに進みました。ただ、その評判がまだ来ていない人に届くまでの時間差が、1年目の数字を押し下げたと考えられます。
要因4:総事業費約700億円と融資366億円、開業前から続く負担
ジャングリア沖縄は、総事業費約700億円規模で整備されました。建設資金として、琉球銀行と商工中金が中心となったシンジケートローン366億円が組まれています。
シンジケートローンとは、複数の金融機関が一緒にお金を貸す仕組みのことです。
JEは開業前から赤字が続いていました。2023年3月期は約19億2000万円、2024年3月期は約10億1800万円、2025年6月期は50億9800万円の純損失です。
開業前の赤字は、大型パークではめずらしくありません。ただ、開業前に積み上がった投資と借入を、開業後の売上で取り戻す必要がありました。
来場者が見込みを下回ると、この固定的な負担がそのまま赤字に響きます。要因1〜3の影響を大きくした、いわば土台の重さです。
なお、4つの要因がそれぞれどれだけ赤字に影響したのかは、公表されている情報からは分かりません。ここでの整理は、報道された事実をもとにした筆者の見立てです。
ジャングリア沖縄は閉園・倒産する?30億円のつなぎ融資とスポンサー探し
2026年9月下旬の時点で、閉園や倒産が決まったという事実は報じられていません。
日本経済新聞によると、政府系の沖縄振興開発金融公庫が30億円のつなぎ融資を行います。あわせて、新しいスポンサー探しも始まったと報じられています。
JEHDの加藤健史CEOは、事業が続くかを心配する声があることを認めたうえで、全社一丸で事業を進めていくという趣旨のコメントを出しました。
沖縄タイムスによると、決算後に開かれた株主総会では、事業計画を主導した刀の責任を問う声も株主から上がりました。
運営会社には、オリオンビールなどの地元企業や、JTB、近鉄グループホールディングスなども出資していると報じられています。出資者がどう支えるかも、今後の注目点です。
地域への効果については、りゅうぎん総合研究所が初年度の経済効果を494億円と発表しました。
一方でマネーポストWEBは、この数字は関連産業での「生産誘発額」で、会社の利益とは別物だと指摘しています。会社の採算と地域への効果は、分けて見る必要があります。

ほかのテーマパークと比べると?USJ・ハウステンボス・レゴランドの歩み
開業後に苦戦したパークは、過去にもありました。
- ユニバーサル・スタジオ・ジャパン:2001年の開業1年目に1000万人を超えましたが、その後は700万人台まで落ち込みました。2010年代に森岡さんらの取り組みもあって立て直しています。
- ハウステンボス:1992年に開業しましたが、2003年に会社更生法の適用を申請しました。2010年にエイチ・アイ・エスの支援を受けてから黒字化しています。
- レゴランド・ジャパン:2017年4月に名古屋で開業し、大人6900円という当時の入場料が高いと話題になりました。その後、ホテルの開業や料金の見直しを重ねています。
比べると、ジャングリアには2つの特徴があります。
1つ目は、都市近郊のUSJやレゴランドと違い、地元の常連客に頼りにくいことです。2つ目は、ハウステンボスと同じ「旅行者が目的地として訪れる」型でありながら、開業1年目で資金の手当てが必要になったスピードの速さです。
一方で、ハウステンボスのように、運営の担い手や資本が変わってから立ち直った例もあります。スポンサー探しの結果は、パークの将来を大きく左右しそうです。
ジャングリア沖縄の今後は?筆者としての考察と見通し
ここからは、テーマパークライターとしての私見です。なお、この記事は現地での取材ではなく、報道と公表データをもとに整理しています。
私は、今回の赤字の根っこには「沖縄旅行の時間の奪い合い」があると考えています。集客、立地、体験の量という課題は、どれも「旅行者が限られた時間とお金の中で選んでくれるか」という1つの問いにつながっています。
その意味で、2026年に入ってからの打ち手は方向として理にかなっています。
- 2026年4月29日、1度に48人が乗れる大型ライド「YAMBARU TORNADO(やんばるトルネード)」が開業
- 約3時間で楽しめる「ふらっとチケット」をレギュラー販売
- パーク&スパと4つのプレミアムパスなどを組み合わせた「ロイヤルチケット」を用意
ふらっとチケットは、ほかの予定がある旅行者に「3時間なら寄ってみよう」という入口をつくります。ロイヤルチケットは、人数ではなく1人あたりの満足と売上を高める商品です。
「旅のスタイルに合わせて選べるパーク」に変わろうとしている点は、前向きに評価してよいと思います。
ただ、楽観はできません。1日平均約2700人という規模では、固定費を支えるのが難しいことは試算からも見えています。2年目は開業ブームの後押しもなくなります。
個人的には、次の4点に注目しています。
- 満足度89.2%の評判が、2年目の来場者数の伸びにつながるか
- 1人あたりの売上(客単価)が上がるか
- 夏以外の閑散期の集客をどう支えるか
- スポンサーが決まり、財務の土台が安定するか
北部に「旅の目的地」が生まれたこと自体には、大きな意味があります。だからこそ、パークが続く形を関係者がどう描くのか、丁寧に見守りたいと考えています。
まとめ:ジャングリア沖縄の173億円赤字は「集客不足×重い固定費」
ジャングリア沖縄の親会社JEHDは、2026年6月期に173億円余りの最終赤字を計上しました。主な原因は子会社JE株式の評価損で、JE自体も約89億円の最終赤字でした。
背景には、見込み150万人に対して約100万人だった集客、北部の立地、体験の量と負担のバランス、約700億円規模の投資負担という要因があると私は見ています。
閉園は決まっておらず、沖縄公庫の30億円のつなぎ融資とスポンサー探しが進んでいます。2年目の数字と新しい支え手が、パークの次の章を決めることになりそうです。
よくある質問
ジャパンエンターテイメントホールディングスとはどんな会社ですか?
ジャングリア沖縄を運営する株式会社ジャパンエンターテイメントの親会社です。今回の173億円余りの赤字は、この親会社の決算の数字です。持株会社になった時期などの詳しい経緯は、今回の報道では明らかになっていません。
ジャングリア沖縄の「ふらっとチケット」はいくらですか?
2026年8月時点で、大人税込2970円、子ども税込1980円です。約3時間楽しめる短時間向けのチケットです。料金や販売条件は変わる可能性があるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。
沖縄公庫の30億円の融資とは何ですか?
政府系の金融機関である沖縄振興開発金融公庫が、運営を続けるためのつなぎ資金として30億円を融資すると日本経済新聞が報じました。新しいスポンサーが見つかるまで、資金繰りを支える役割とみられます。
夢咲 未来(テーマパークライター)


