ジャングリア沖縄の赤字額は、開業後初の決算となる2026年6月期で、親会社が約173億円、運営会社が約89億円の最終赤字でした。
よく目にする「51億円」は、開業前の2025年6月期に運営会社が出した赤字です。この記事では3つの数字の違いに加えて、赤字の原因、株主総会で示された再建の動き、パークが今後どうなりそうかを整理します。
テーマパークライターの夢咲未来です。今回は、ニュースで報じられた数字を一つずつ確かめながら、落ち着いて読み解いていきます。
ジャングリア沖縄の赤字額はいくら?3つの数字の違いを一覧で整理
結論から書きます。ジャングリア沖縄に関係する主な赤字額は、次の3つです。
| 決算期 | 会社 | 最終損益 | どんな時期か |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | ジャパンエンターテイメント(運営会社) | 50億9800万円の赤字 | 開業前で、売上はゼロ |
| 2026年6月期 | ジャパンエンターテイメント(運営会社) | 約89億円の赤字(報道では「89億円余り」) | 開業後初めての決算 |
| 2026年6月期 | ジャパンエンターテイメントホールディングス(親会社) | 約173億円の赤字 | 開業後初めての決算。子会社株式の評価損が中心 |
いまのジャングリアの損失を表す数字として、見出しに最もよく使われているのは親会社の約173億円です。
ただ、この173億円と運営会社の89億円は、足し算するものではありません。親会社の赤字の多くは、子会社である運営会社の不振を帳簿に反映したものだからです(詳しくは後ほどご説明します)。
「51億円」「89億円」「173億円」は、どれも間違いではありません。対象の期間と会社が違うだけです。ここを押さえておくと、ニュースの見出しにまどわされにくくなります。
開業前の赤字51億円とは?2025年6月期決算のポイント
ジャングリア沖縄を運営しているのは、名護市に本社がある「ジャパンエンターテイメント」です。2018年に設立され、2025年7月25日に今帰仁村・名護市にまたがるパークを開業しました。
その運営会社の2025年6月期決算は、純損失が50億9800万円でした。決算公告は、2025年10月15日の官報に載っています。
この期が終わったのは2025年6月30日で、開業日より前です。そのため売上はなく、建物の整備、スタッフの採用や研修、宣伝といった「開店準備」のための費用が中心の赤字でした。
本筋に関係する数字だけを抜き出すと、次のとおりです。
- 営業損失:1200万円
- 経常損失:50億9100万円
- 純資産:251億3400万円
- 総資産:627億2900万円
営業損失が小さいのに経常損失が約51億円まで膨らんでいるのは、本業以外の費用が大きかったことを示しています。
筆者としては、この開業前の赤字は「計画の範囲内の先行投資」と受け止めてよいと考えています。問題は、開業後の売上でどこまで費用を埋められるかでした。
開業後の赤字173億円の中身は?親会社と運営会社の関係
その答えが出たのが、2026年9月下旬の決算報道です。
沖縄タイムスやNHKなどによると、親会社のジャパンエンターテイメントホールディングスは、2026年6月期に約173億円の最終赤字でした。運営会社のジャパンエンターテイメントも、約89億円の最終赤字だったと報じられています。

173億円の大部分は「子会社株式の評価損」です
沖縄タイムスの報道では、親会社の赤字の主な要因は、運営会社の株式の評価損を計上したことだとされています。
親会社(持株会社)は、運営会社の株を持つことで全体をまとめています。その運営会社が大きな赤字を出したため、「持っている株の価値が下がった」と判断し、その分を損失にしたという仕組みです。
これは、今すぐ現金が出ていく損失ではありません。けれども、会社自身が「当初の見込みほど価値を生み出せていない」と認めた数字でもあります。筆者としては、金額以上に、この意味のほうが重いと受け止めています。
売上高や営業損益の確定値は?
開業1周年となる2026年7月の発表では、初年度の売上高は100億円を超える見通しとされていました。
一方、2026年6月期の確定した売上高や営業損益、評価損の正確な内訳は、筆者が確認できた報道の範囲では明らかになっていません。数字が公表された時点で、あらためて整理したいと考えています。
株主総会と再建計画の中身は?森岡毅さんの謝罪と30億円のつなぎ融資
2026年9月25日、親会社は那覇市内で株主総会を開きました。
琉球新報によると、ジャングリアの仕掛け人として知られる株式会社刀の森岡毅さんが出席し、謝罪したうえで再建計画を示しました。刀は主要株主で、実質的に経営を率いる立場にあると報じられています。
再建計画の詳しい中身はまだ公表されていません
気になる再建計画の具体策については、現時点で詳しいことが分かっていません。
沖縄タイムスによると、株主に配られた資料は総会の後に回収されました。森岡さんは報道陣の問いかけに応じなかったと伝えられています。
そのため、コスト削減の幅や、新しい出資を募るのかといった中身は、公式な発表を待つ必要があります。筆者は、ここを憶測で埋めることは控えます。
沖縄公庫が30億円のつなぎ融資へ
資金面での具体的な動きとして報じられているのが、政府系金融機関の支援です。
日本経済新聞によると、沖縄振興開発金融公庫(沖縄公庫)が、30億円のつなぎ融資を最終調整しています。10月上旬に単独で融資する予定とされています。
沖縄公庫は、開業時の366億円の協調融資に加わりました。さらに2026年4月には、商工中金や琉球銀行などとあわせて計20億円を追加で融資しています。
「つなぎ融資」とは、本格的な立て直し策が整うまでの間、資金が途切れないように貸し出すお金のことです。当面の運営資金は確保される見込みですが、立て直しが「時間との勝負」になっていることも示していると、筆者は受け止めています。
「継続企業の前提」の注記とは?
一部の報道では、親会社の決算に、会社が事業を続けていくことについて「重要な疑義」がある、という趣旨の注記が付いたと伝えられています。
これは一般に「継続企業の前提に関する注記」と呼ばれます。大きな赤字や資金繰りの不安があるときに、「このまま事業を続けられるかどうかに、重要な不確かさがある」と決算書で知らせるものです。
注記が付いたからといって、すぐに閉園するわけではありません。ただ、金融機関との借入条件の見直しや、取引先の見る目に影響することもあるため、再建計画がどれだけ具体的かがいっそう問われることになります。
なお、報道によると加藤健史CEOは、お客さまへのサービスや企業との取引に影響はなく、運営を続けるという趣旨のコメントを出しています。2026年9月26日時点で、閉園や営業停止は発表されていません。
ジャングリア沖縄の赤字の原因は?来場者100万人と初期投資700億円
主な原因は、初年度の来場者が約100万人にとどまったことと、約700億円の初期投資にともなう減価償却などの重い固定費の2つです。
来場者数:想定を大きく下回りました
開業1周年の発表では、初年度の来場者はスパを含めて約100万人でした。開業から半年の時点では約65万人だったので、後半の半年は約35万人だった計算になります。
沖縄タイムスは、当初150万人を見込んでいたと報じています。ただ、運営会社は来場者数の目標を正式な数字としては公表していない点に注意が必要です。
加藤CEOは来場者数について、思うような数字に届かなかったという趣旨の説明をしています。
初期投資:お客さまが少なくても費用はかかり続けます
総事業費は約700億円です。13の民間金融機関などからの協調融資366億円と、刀やオリオンビール、リウボウなど地元企業を含む株主の出資でまかなわれたと報じられています。
これだけの投資をすると、施設の購入費用を何年かに分けて費用にする減価償却費や、借入金の利息が毎年かかります。来場者が少ない日でも、この費用は減りません。
さらに、開業前後のプロモーション費用も重なりました。来場者の伸び悩みと固定費の重さが重なったことが、赤字が大きくなった理由と考えられます。
ジャングリアの赤字を来場者1人あたりで計算すると?
173億円や89億円は大きすぎて、実感しにくい金額です。そこで、あくまで目安として、身近な単位に置き換えてみます。
運営会社の赤字約89億円を、初年度の来場者約100万人で割ると、1人あたり約8900円になります。

「1人ごとに現金で損をしている」わけではありません
ここは誤解のないように、先にお伝えします。この約8900円は、減価償却費や宣伝費などの固定費を含む赤字を、来場者数で割っただけの数字です。
お客さまが1人来るたびに、その場で8900円の現金が出ていくという意味ではありません。赤字の多くは、来場者数に関係なくかかる費用だからです。
そのうえで比べると、大人1Dayチケットは国内在住の方向けで6930円(税込)と案内されてきました。国外在住の方向けは別の価格です(料金は変わることがあるので、最新は公式サイトでご確認ください)。
国内在住の方向けのチケット代を上回る固定費の負担が、1人あたりに乗っている計算になります。
この計算から分かるのは、「チケットを少し値上げする」だけでは赤字は埋まりにくいということです。固定費の重さを考えると、来場者の数そのものを増やすことがいちばん効くと考えられます。
経済効果494億円と満足度の改善|「失敗」と言い切れない理由
一方で、明るい数字もあります。
りゅうぎん総合研究所の試算では、開業からの1年間で沖縄県内にもたらした経済波及効果は494億円でした。同研究所の別の試算では、2025年のプロ野球春季キャンプが約224億円、クルーズ船観光が約161億円です。
ただし、494億円はジャングリアの売上でも利益でもありません。北部のホテルや飲食店、レンタカーなど、地域全体に広がったお金の流れを推計した数字です。
言いかえると、ジャングリアは「地域にはお金を落としているのに、会社自身はもうかっていない」状態です。筆者は、このギャップこそが今回の決算を読むうえでいちばん大切なポイントだと考えています。
現場の満足度は大きく改善しています
開業直後は、雨や長い待ち時間への不満の声が目立ちました。
その後、パークの満足度は開業月の69.2%から、2026年5月には89.2%まで上がったとされています。1人が乗るアトラクションの平均数も、2.3個から4.5個に増えました。
2026年4月29日には、一度に48人が乗れる大型ライド「YAMBARU TORNADO(やんばるトルネード)」も開業しています。体験の質は、数字の上では着実に良くなっています。
ジャングリア沖縄の今後は?再建の鍵を考える(筆者の考察)
ここからは、テーマパークライターとしての私見です。
まず、開業前の51億円から、開業後は運営会社で約89億円、親会社で約173億円へと赤字が広がりました。開業しても赤字が縮まなかったという事実は、はっきり受け止める必要があると考えます。
USJの初期と比べて見えること
大型パークが最初の数年でつまずく例は、過去にもあります。
森岡さんがかつてマーケティングを担ったUSJは、2001年の開業初年度に約1100万人を集めました。ところが2年目には約760万人まで落ち込み、その後も長く苦しみます。
USJが本格的に回復したのは、2010年代に入ってからです。2014年度には約1270万人と、開業年を上回りました。落ち込みから回復まで、10年以上かかったことになります。
ここで大切なのは、ジャングリアとUSJでは出発点が違うことです。USJは大都市・大阪にあり、近くに大勢の住民がいました。ジャングリアは沖縄本島北部にあり、主なお客さまは限られた日数で旅行する観光客です。
つまりジャングリアは、USJのように「時間をかけて地元のファンを育てる」やり方が、そのままでは通用しにくい立地にあります。一方で、30億円のつなぎ融資が示すとおり、USJほど長い回復の時間は残されていないと筆者は見ています。
再建にいちばん効くのは「県内リピーター」の土台づくり
では、何が再建の鍵になるのでしょうか。筆者は、沖縄県内のリピーターを増やすことが最も効くと考えます。
理由は、先ほどの1人あたりの計算にあります。赤字の多くが固定費である以上、単価を上げるより来場者の「数」を積み上げるほうが効果的です。そして、何度も来てくれる可能性が高いのは、約146万人が暮らす沖縄県内の方々です。
観光客は季節や天候に大きく左右されます。県民の方が平日や閑散期にも足を運ぶ仕組み(年間パスや短時間チケット、雨の日でも楽しめる企画など)ができれば、来場者数の波がなだらかになります。
もちろん、観光客向けの高価格商品も大切です。ただ個人的には、それは「土台」の上に積み上げるものだと考えています。満足度89.2%という改善は、リピーターを育てる材料として、まさに今こそ生かすべきものです。
注目したい3つのポイント
今後、筆者が特に注目しているのは次の3点です。
- 回収された再建計画が、いつ・どこまで公表されるか
- 2年目の来場者数が、報道で当初の想定とされた150万人にどこまで近づくか
- 県内リピーター向けの商品が、平日や閑散期の来場者をどれだけ増やせるか
赤字額の大きさだけで「失敗」と決めつけるのは早いと考えます。同時に、「経済効果があるから大丈夫」と安心できる段階でもありません。2年目の来場者数が、再建計画の信頼性を測るいちばん分かりやすい物差しになる、というのが筆者の見立てです。
まとめ:ジャングリア沖縄の赤字額と今後のポイント
- 開業前(2025年6月期):運営会社が50億9800万円の純損失。売上はゼロで、開業準備の費用が中心
- 開業後初(2026年6月期):運営会社が約89億円、親会社が約173億円の最終赤字。親会社の分は子会社株式の評価損が中心で、2つを足し算するものではない
- 原因:初年度の来場者約100万人が、報道で当初想定とされた150万人を下回ったこと(会社は目標を正式公表していない)。加えて、約700億円の投資による減価償却などの固定費
- 再建の動き:9月25日の株主総会で森岡毅さんが謝罪し、再建計画を示した。資料は回収され、中身は未公表。沖縄公庫が30億円のつなぎ融資を最終調整中
- 明るい材料:県内への経済波及効果は494億円、満足度は89.2%まで改善
- 現状:運営は継続中で、閉園や営業停止は発表されていない
よくある質問
ジャングリア沖縄の赤字額は結局いくらですか?
開業後初の2026年6月期決算で、親会社のジャパンエンターテイメントホールディングスが約173億円、運営会社のジャパンエンターテイメントが約89億円の最終赤字です。「51億円」は開業前の2025年6月期の数字です。親会社の赤字は子会社株式の評価損が中心なので、2つの金額は足し算しません。
赤字が大きいと、ジャングリア沖縄は閉園してしまいますか?
2026年9月26日時点で、閉園や営業停止は発表されていません。加藤健史CEOは運営を続けるとコメントしており、沖縄公庫による30億円のつなぎ融資も最終調整中と報じられています。お出かけ前には、営業時間やチケットの最新情報を公式サイトでご確認ください。
採算ラインの来場者数は何人ですか?
運営会社は、採算ラインや来場者数の目標を正式には公表していません。報道では、当初150万人を見込んでいたと伝えられています。初年度の実績は、スパを含めて約100万人でした。
数字の裏にある事情まで丁寧にお伝えできるよう、これからも情報を確かめながら書いてまいります。
夢咲 未来(テーマパークライター)

