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ジャングリア沖縄から銀行が撤退?融資団の噂と資金調達の実態

やんばるの深い森に囲まれたジャングリア沖縄の全景と、青空の下に並ぶ地方銀行の建物のイメージ ジャングリア沖縄
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「ジャングリア沖縄から銀行が撤退した」は誤解です。メガバンクは開業前に融資を見送りました。一方で、地元中心の融資団は2026年6月期に173億円の赤字が出た後も支援を続けています。

実際にお金を貸したのは、琉球銀行と商工中金が主幹事を務めた13の金融機関で、融資額は計366億円です。この記事では、700億円の資金集めから開業後の追加融資、2026年9月に日本経済新聞が報じた沖縄公庫による30億円のつなぎ融資までを、時系列で整理します。

ジャングリア沖縄から銀行は撤退した?結論と年表

開業後に銀行が一斉に手を引いたという報道は、筆者が確認した範囲ではありません。

噂が広がった理由は、開業前の「メガバンク離脱」の報道と、開業後の「巨額赤字」の報道が、時期の区別なく一緒に読まれたためだと考えられます。まずは全体の流れを年表で確認してみましょう。

  • 2018年:運営会社ジャパンエンターテイメント(JE)を設立。夏から資金集めを始める
  • 2019年:建設地が今帰仁村の嵐山ゴルフ場に決まる。みずほ銀行を筆頭に3メガバンクが融資を検討
  • 2020年1月:大和証券グループ本社が刀に140億円の出資を決める
  • 2020年春〜2022年:コロナ禍とウクライナ侵攻の影響で、メガバンクが離脱
  • 2022年春:借入額が目標に約100億円足りなくなるおそれが出る
  • 2022年8月:13金融機関による366億円の協調融資がまとまる
  • 2025年7月25日:ジャングリア沖縄が開業
  • 2026年4月:商工中金・琉球銀行・沖縄公庫などが計20億円を追加融資
  • 2026年6月期:親会社JEHDが約173億円の最終赤字
  • 2026年9月:沖縄公庫が30億円のつなぎ融資で最終調整に入ったと日経が報道

年表で並べると、メガバンクがいなくなったのは2022年までの「開業前」の出来事だと分かります。「撤退」というより、最初から「参加しなかった」と表現するほうが正確です。


メガバンクはなぜ融資を見送った?資金調達の経緯

日経ビジネスによると、資金集めは2018年夏に始まり、約4年かかりました。先頭に立ったのは、刀の創業メンバーでジャパンエンターテイメントCEOの加藤健史氏です。

当時の刀は、創業から1年ほどの会社でした。森岡毅氏はUSJをV字回復させた立役者ですが、刀自体にはコンサル事業以外の実績がほとんどない、という趣旨の声が金融機関の側から出ていたと伝えられています。

加藤氏らは、過去に経営難に陥った国内パーク5〜6カ所を分析しました。そのうえで「過剰投資」を失敗の原因に挙げ、ゴルフ場跡地の地形を活かして投資を抑える計画を示したそうです。

3メガバンクとはどこか

報道で名前がはっきり出ているのは、沖縄県内に支店を持つみずほ銀行です。日経ビジネスは、みずほ銀行を筆頭に3メガバンクが融資を検討していたと報じました。

残りの2行の名前は、筆者が確認した報道には書かれていませんでした。一般に「3メガ」といえば三菱UFJ銀行と三井住友銀行を指しますが、両行が検討していたと言い切れる材料はないため、ここでは断定しません。

コロナとウクライナ危機で「約100億円」の不足

2020年春にコロナ禍が始まると、メガバンクは少しずつ距離を置くようになりました。さらに沖縄タイムスは、2022年のロシアによるウクライナ侵攻で世界経済の先行きが見えにくくなる中、メガバンクが離脱したと報じています。

加藤氏は、2022年春に「積み上がった融資が一気に崩れた」と振り返っています。2025年夏に開業するには、2022年夏までに資金を集めきる必要がありました。

筆者としては、メガバンクの判断は「このパークはダメだ」という評価というより、二つの大きな不確実性が重なる中で、実績の浅い会社の大型案件のリスクを取りきれなかった結果だと読んでいます。

※画像はAIによるイメージ

ジャングリア沖縄の融資団とは?13行366億円の顔ぶれ

融資団とは、複数の金融機関がチームを組んで、ひとつの事業にお金を貸す仕組みです。専門用語では「協調融資」や「シンジケートローン」と呼び、まとめ役の銀行を「主幹事(アレンジャー)」といいます。

大きなお神輿を一人ではなく大勢で担ぐように、何行かでリスクを分け合う形です。

主幹事は琉球銀行と商工中金

メガバンクのいない中で主幹事を引き受けたのが、地元の琉球銀行と商工組合中央金庫(商工中金)でした。日本経済新聞によると、融資額の内訳は商工中金が80億円、琉球銀行が50億円です。

琉球銀行の川上康会長は日経ビジネスの取材に「チャンスだと思った」と答えています。沖縄では稼いだお金が県外へ流れる「ザル経済」が長年の課題で、本土の大手銀行が県内の大型案件を主導する状況を悔しく思っていたそうです。

商工中金の桑本繁ファイナンシャル・デザイン部長は、資金不足が迫った局面で加藤氏に「必ず目標額を集めます」と伝えたといいます。

信用を補った工夫

  • 日本格付研究所(JCR)に事業の評価を依頼した。報道では「最上位」の評価とされていますが、どの区分の評価かは詳しく書かれていません。会社全体の信用格付けとは別物として読むのが安全です
  • 国家戦略特区の手続きを進め、2021年にパーク関連事業が特区の特定事業に認定された
  • 関係者が北海道から鹿児島県まで、数十の金融機関を回った。千葉銀行や山陰合同銀行なども参加した

見落とされがちですが、日本経済新聞の報道では、政府系の沖縄振興開発金融公庫(沖縄公庫)も、開業時の366億円の協調融資に加わっていました。この点は、後で公庫のつなぎ融資を考えるときに大切になります。


700億円の内訳は?出資と融資の違い

総事業費の約700億円は、借りたお金(融資)と、株主が出したお金(出資)をほぼ半分ずつで賄う計画でした。

区分金額の目安主な出し手
融資=返すお金約366億円琉球銀行・商工中金(主幹事)、沖縄公庫、千葉銀行、山陰合同銀行など計13機関
出資=株主のお金約350億円刀、オリオンビールやリウボウなどの地元企業、JTB、近鉄グループHDなど
合計約700億円—

融資は利息をつけて返す約束のお金です。出資は株主としてリスクを一緒に背負うお金で、返す義務はありません。

大和証券グループ本社は2020年1月、当時専務執行役だった荻野明彦氏(現社長)が主導して、刀への140億円の出資を決めました。刀はこの資金をもとにジャパンエンターテイメントへ30億円を出資しています。加藤氏は、これでメガバンクに代わる信用力が付いたと振り返っています。

日経ビジネスによると、商工中金は国の資金を入れる案も示しましたが、森岡氏と加藤氏は「100%民間投資」にこだわって断りました。


赤字173億円の中身は?減損と来場者数を整理

2026年9月、沖縄タイムスやNHKが、親会社ジャパンエンターテイメントホールディングス(JEHD)の開業後初めての決算(2026年6月期)で、約173億円の最終赤字が出たと報じました。

赤字の大半は「子会社株の評価損」

報道によると、赤字の主な原因は、JEHDが持つ子会社JEの株式評価損です。JE自身の最終赤字は約89億円でした。

つまり、173億円がそのまま現金として出ていったわけではありません。JEの業績が悪化したため、親会社が持つJE株の帳簿上の価値を切り下げた、という会計上の損失が大きな割合を占めています。

ただし、運営会社そのものも約89億円の赤字です。「一時的な会計処理だから心配ない」とまでは言えない点に注意が必要です。

「100万人で損益分岐点」と「計画の4割」の違い

数字が食い違って見えるのは、基準がそれぞれ違うためです。

  • 初年度の延べ来場者100万人:隣接するスパとの延べ人数です。当初の年間想定150万人に対しては約3分の2にあたります
  • 「計画の4割」:日本経済新聞が開業1年のタイミングで報じた、足元(直近)の来場ペースです。年間の累計とは別の数字です
  • 「損益分岐点100万人」:SmartFLASHが伝えた開業時の目安です。ただ、JEは約89億円の赤字なので、少なくとも会計上の黒字ラインには届いていません

整理すると、初年度は開業直後のにぎわいで年間100万人まで積み上がったものの、時間がたつにつれて来場ペースが落ち、足元では計画の4割ほどになっている、と読むのが自然です。読売新聞も、入場者が計画の半数程度で「資金ショートのリスク」があると報じています。


琉球銀行の追加融資と沖縄公庫のつなぎ融資の金額は?

ここが、「撤退の噂」への答えの中心になる部分です。

日本経済新聞によると、2026年4月には商工中金・琉球銀行・沖縄公庫などが計20億円を追加で融資しました。同じく日経は7月、琉球銀行がこの支援を「リスクを取り地域振興」と位置付けていると報じています。

さらに2026年9月、日経は沖縄公庫が30億円のつなぎ融資を行う方向で最終調整に入ったと報じました。つなぎ融資とは、次の資金の手当てができるまでの間、手元のお金が尽きないように貸す短期の融資のことです。一部の報道では、2026年8月1日時点の手元資金は約10億円で、このままだと10月中旬に尽きる計算だと伝えられています。

赤字の中で、融資団は手を引くどころか、お金を追加で出しているのが実態です。

※画像はAIによるイメージ

専門家は赤字をどう見る?大和証券の判断がカギ

経済ジャーナリストの松崎隆司氏はSmartFLASHの取材に対し、赤字の多くは巨額の先行投資によるもので、ただちに債務超過ではないため、すぐになくなることはないだろうと話しています。一方で、事業計画の大幅な見直しと経営責任は避けられないとも指摘しました。

松崎氏が「今後のカギ」に挙げたのは、大和証券グループ本社の判断です。刀の出資の元手には大和からの資金が含まれ、刀の信用は大和によって支えられている面があるためです。

また、刀が手がけたお台場の「イマーシブ・フォート東京」が2026年2月末で営業を終えたことも、刀の経営を心配する声につながっています。なお、日経の報道では、JEHDの株主総会が9月25日に開かれる予定とされていました。


筆者の考察:銀行が支え続ける理由と今後の見通し

ここからは筆者の私見です。

銀行が追加融資する「合理的な理由」

地元銀行の支援を「ザル経済を変えたいという思い」だけで説明するのは、少し情緒的すぎると思っています。金融の目線で見ると、ほかにも理由があります。

一つは、すでに貸している366億円を守るためです。資金が尽きて事業が止まれば、既存の融資の回収が難しくなります。数十億円の追加で事業を続けさせるほうが、損失を小さくできると判断するのは自然なことです。

もう一つは、パークの施設がやんばるの森の地形に合わせて造られている点です。ほかの用途に転用しにくいため、担保としての価値は「パークとして動いていること」に大きく頼っていると考えられます。

そして、北部の雇用や観光への波及があります。地元の銀行にとって、取引先の多い地域経済そのものを守ることは、自らの経営基盤を守ることにもつながります。

公的資金は「初めて」ではなく「重みが増した」

沖縄公庫の30億円を、「100%民間」の看板が崩れたと見る声もあると思います。

ただ、先ほど触れたとおり、公庫は開業時の協調融資にも加わっていました。森岡氏らが断ったのは国の資金を「投資」として入れる案で、政府系金融機関からの「融資」はもともと含まれていたと読むのが正確だと筆者は考えています。

変わったのは、公的な資金の重みです。資金繰りをつなぐ役割を政府系機関が担うことになれば、「地域振興のための公的支援をどこまで続けるか」という、県民に説明が必要な論点も生まれます。

地方パークの歴史から見る「2年目以降」

テーマパークは、開業直後の話題性よりも、その後の数年間で真価が問われる業態です。国内の事例を振り返ると、その難しさがよく分かります。

  • USJ:2001年度の来場者は約1100万人でしたが、数年後には800万人台まで落ち込みました。その後、森岡氏らのマーケティング改革で回復しています
  • ハウステンボス(長崎県):1992年に開業し、巨額の投資負担から2003年に会社更生法の適用を申請しました。2010年にエイチ・アイ・エスの支援で再建に入り、黒字化しています
  • レオマワールド(香川県):1991年に開業しましたが、2000年に一度休園し、2004年に運営会社が変わって再開しました

この流れから筆者が感じるのは、初期投資が重い地方パークは、スポンサーや金融機関がどこまで粘れるかで運命が分かれるということです。ハウステンボスのように、つまずいた後でも再建できた例はあります。

数字で見る見通し

総事業費700億円を、初年度の延べ来場100万人で割ると、1人あたり約7万円分の投資を背負っている計算になります。入場料や飲食の売上だけで回収するには、来場者数を増やすことと、1人あたりの消費額を上げることの両方が欠かせません。

日経によると、ジャングリアは割安なチケットを打ち出し、加藤CEOは「1日どっぷり」遊んでもらうのは難しかったと振り返っています。筆者としては、滞在時間の短さを受け入れて半日観光として組み込みやすくする方向は、美ら海水族館など北部の人気スポットと組み合わせたい旅行者にとって、現実的な修正だと考えています。

今後の注目点は三つだと考えています。

  • 株主総会の後に示される事業計画の見直しの中身
  • 大和証券グループを含む株主が、追加で出資するかどうか
  • 割安チケットで、来場のペースが計画の4割からどこまで戻るか

これから訪れる方へ

現時点の報道からは、「すぐに閉園する」とは読み取れません。

ただし、経営の見直しにあわせて、チケットの種類や価格、営業時間などが変わる可能性はあります。お出かけ前には、必ず公式サイトで最新の情報を確かめてください。


まとめ

「ジャングリア沖縄から銀行が撤退」という噂は、みずほ銀行を筆頭とする3メガバンクが開業前に融資を見送った話と、開業後の赤字の報道が混ざって広まったものと考えられます。

実際には、琉球銀行と商工中金を主幹事とする13機関が2022年8月に366億円を融資しました。2026年6月期に親会社で約173億円の最終赤字が出た後も、4月に20億円の追加融資が行われ、9月には沖縄公庫が30億円のつなぎ融資で最終調整に入ったと報じられています。

今後のカギは、事業計画の見直し、株主の判断、そして来場ペースの回復です。


よくある質問

融資を見送った3メガバンクはどこですか?

報道で名前が出ているのはみずほ銀行です。日経ビジネスは「みずほ銀行を筆頭に3メガバンクが検討していた」と報じましたが、残りの2行の名前は、筆者が確認した報道には書かれていません。

開業後の追加融資はいくらですか?

日本経済新聞によると、2026年4月に商工中金・琉球銀行・沖縄公庫などが計20億円を追加で融資しました。さらに9月には、沖縄公庫が30億円のつなぎ融資で最終調整に入ったと報じられています。

沖縄公庫のつなぎ融資とは何ですか?

次の資金の手当てができるまで、手元のお金が尽きないように政府系の沖縄振興開発金融公庫が貸す短期の融資です。なお、沖縄公庫は開業時の366億円の協調融資にも参加していました。

テーマパークライター 夢咲 未来
幼い頃から全国の遊園地やテーマパークを訪ね歩き、アトラクションや運営の移り変わりを追い続けています。家族・恋人・友人・ひとり旅といったさまざまな視点から、公式情報と報道を照らし合わせて、施設の楽しみ方と今の姿をお伝えしています。