親会社JEHDは2026年6月期に約173億円の最終赤字を出しました。ただ、9月下旬の時点で、出資企業がジャングリア沖縄から撤退するという正式発表は確認できません。
いま報じられているのは、一部の関係者が追加出資に応じなかったことです。さらに、私的整理(事業再生ADR)の可能性も取り沙汰されています。「ジャングリア 赤字」「ジャングリア 撤退」と検索される背景には、こうした不安の重なりがあると考えられます。
この記事では、テーマパークライターの夢咲未来が、出資・融資にかかわる企業の動きと、今後のカギとなる大和証券グループの位置づけを整理します。そのうえで、これから遊びに行く方が確かめておきたいこともお伝えします。
ジャングリア沖縄から撤退した企業はある?結論
結論として、出資企業が「撤退した」「株式を手放した」という正式発表は、現時点の報道には見当たりません。
運営会社の加藤健史代表取締役CEOは、株主総会のあと、「顧客へのサービス提供や、企業との各種契約や取引に影響が生じることはない」という趣旨のコメントを出しています。
ただし、何も動いていないわけではありません。報道をたどると、次のような動きが見えてきます。
- 計画の段階で、メガバンク3行が融資を見送っていた
- 週刊文春の報道によると、追加の資金集めの場面で、大和証券グループを含む一部の関係者が追加出資に応じなかった
- 大和証券グループ以外に追加出資を見送った関係者の名前は、筆者が確認できた報道の範囲では特定されていない
つまり今の状況は、「撤退」ではなく「追加の支援をためらう動きが出ている」段階だと考えられます。
お付き合いにたとえると、「別れを切り出された」のではありません。「これ以上の出費は少し考えさせて」と言われている状態に近いと、私は受け止めています。
ジャングリア沖縄の親会社が173億円の赤字|何が起きた?
ジャングリア沖縄は、沖縄県北部の今帰仁村(なきじんそん)と名護市にまたがる約60ヘクタールの敷地に、2025年7月に開業した大型テーマパークです。
世界自然遺産にも登録された沖縄北部の自然を生かしたアトラクションや、温泉施設を備えています。沖縄観光の新しい柱として、大きな期待を集めました。
2026年9月24〜25日にかけて、運営会社「ジャパンエンターテイメント」の親会社であるJEHD(本社・名護市)の2026年6月期決算が報じられました。内容は約173億円の最終赤字です。
これは開業後初めての通期決算です。JEHDは9月25日の午後に那覇市内で定時株主総会を開き、財務状況と今後の経営方針を株主に説明したと伝えられています。
赤字の中身は「減損」と「初期投資の重さ」
経済記者の解説によると、今回の赤字には、持株会社JEHDで生じた減損が含まれています。減損とは、施設などの資産価値を、実際に稼げる力に合わせて帳簿の上で引き下げる処理のことです。
このほか、次のような要因が重なったとされています。
- 巨額の初期投資にともなう減価償却費(建物や設備の費用を何年かに分けて計上するもの)
- 開業前に大きくかけたプロモーション費用
- 集客の伸び悩み
173億円のうち、減損と営業上の損失がそれぞれいくらなのかという内訳は、筆者が確認できた報道では示されていません。
売上高の具体的な金額も、確認できた範囲の報道には明記されていませんでした。日本遊園地学会会長の塩地優氏は「開業初年度に売上と同規模の赤字」という見方を示しています。この見方に従えば、売上も百数十億円規模と読めますが、これはあくまで筆者の推測です。正確な数字は、今後の公式な開示で確かめる必要があります。
なお、運営会社単体では、開業直前の2025年6月期にすでに約51億円の赤字が出ていました。
来場者は「最低ライン」を越えていた
見落とせないのが来場者数です。
開業時の損益分岐点(利益が出るかどうかの境目)は来場者100万人、当初の目標は150万人でした。実際の来場者は延べ約100万人だったと報じられています。
長年いろいろなパークを見てきた立場から言うと、新しいパークの1年目は「物珍しさ」でいちばん人が集まりやすい時期です。その1年目が損益分岐点ぎりぎりだったことが、金融機関や出資者の目を厳しくしているのだと思います。
ジャングリア沖縄の出資企業・融資銀行は?支える顔ぶれ
「撤退する企業はあるの?」を考えるには、まず「誰がお金を出しているのか」を知る必要があります。
報道によると、総事業費は約700億円です。USJを再建したことで知られる森岡毅氏率いる株式会社刀は、この事業費を「融資(デット)」と「出資(エクイティ)」で半分ずつ用意する方針をとりました。
- 融資:返済を約束して借りるお金です。銀行が貸し手になります。
- 出資:株主として事業に参加するお金です。返済義務はありませんが、事業がうまくいかなければ出資した企業も損をします。
報道で名前が挙がっている主な関係者を、表にまとめました。
| 立場 | 企業・団体 | 報道されている動き |
|---|---|---|
| 直接出資(事業を主導) | 株式会社刀 | 運営を主導。出資資金は、大和証券グループ本社が刀に出資したお金などから出ていると松崎隆司氏が解説 |
| 間接(刀の株主) | 大和証券グループ本社 | ジャングリアへの直接出資ではなく、刀を通じた関わり。週刊文春は追加出資に応じなかったと報道 |
| 直接出資(地元企業) | オリオンビール、リウボウなど | 報道で地元の出資企業として名前が挙がる。撤退の報道は見当たらない |
| 報道で名前が挙がる | クールジャパン機構 | 官民ファンドとして関連報道に登場。JEHDへの出資の有無・金額は筆者が確認できた範囲では未確認 |
| 融資(主幹事) | 商工中金 | 融資団をまとめる役。国家戦略特区の認定取得を助言 |
| 融資 | 民間金融機関13社 | 合計366億円を融資 |
| 融資を見送り | メガバンク3行 | 計画段階で融資しなかった |
出資金の合計は約350億円とされています。一方、各社の出資比率は、確認できた報道では公表されていません。
表を見ると、「撤退」と書かれた企業は一社もありません。ただ、一歩引いている企業があることは読み取れます。
なお、アトラクションや飲食などで協力するオフィシャルパートナー(協賛企業)が契約を打ち切ったという報道も、筆者が調べた範囲では見当たりませんでした。今回問われているのは、協賛ではなく「出資と融資」の話です。

なぜ「撤退」がささやかれる?報道から見える3つの背景
背景1:メガバンクは最初から慎重だった
報道によると、森岡氏には巨大テーマパークをゼロから立ち上げた経験がなく、金融機関の中には事業計画を不安視する声があったといいます。
報道では、東京ディズニーリゾートやUSJのような初期投資が2000億円を超える規模とは違う、とも比べられています。それでも700億円は、地方の民間テーマパークとしては非常に大きな投資です。
こうした事情から、メガバンク3行は融資を見送りました。代わりに商工中金が主幹事となり、国家戦略特区の認定を受けたうえで、13の民間金融機関から366億円を集めています。
つまり、大手銀行ははじめから参加していなかったというのが正確なところです。
背景2:追加の資金集めが難航したと報じられた
週刊文春は一連の記事で、追加融資が難航している様子や、20億円規模の追加融資をめぐる厳しい見方を伝えてきました。
同誌の見出しには、追加出資に応じなかったのは大和証券グループだけではなかった、という趣旨のものもあります。ただし、ほかの関係者の具体名は、確認できた範囲では明らかになっていません。
すでに出したお金を引き上げることと、新しくお金を出さないことは意味が違います。今起きているのは後者です。
背景3:刀のほかの施設の閉業と幹部の離脱
刀が運営していたお台場の「イマーシブ・フォート東京」は、開業から約2年の2026年2月末に営業を終えました。
CFOをはじめとする幹部や主力マーケターの離脱も報じられています。森岡氏は、経営者として判断と責任を重く受け止めるという趣旨のコメントを出しました。
姉妹施設の閉業、中心メンバーの離脱、そして173億円の赤字。この3つが重なって「ジャングリアも撤退するのでは」という連想が広がったのだと、私には見えます。
大和証券の判断と私的整理(事業再生ADR)が今後のカギ
経済ジャーナリストの松崎隆司氏は、今回の赤字は巨額の先行投資によるところが大きいとみています。現時点で債務超過(借金が資産を上回る状態)ではないため、ジャングリア沖縄がすぐになくなることはないだろうとの見方です。
一方で、事業計画の大幅な見直しと、森岡氏らの経営責任は避けられないとも指摘しています。
松崎氏が特に重視しているのが大和証券グループ本社の判断です。刀の出資分は大和証券が刀に出資したお金などから出ており、刀の信用はほぼ大和証券に支えられている面がある、という見立てです。
「撤退」を考えるうえでいちばん注目したいのは、大和証券がこれからも刀とジャングリアを支え続けるかどうかです。
専門家が触れた「事業再生ADR」とは
塩地優氏は沖縄タイムスの記事へのコメントで、債務の整理は避けられない状況だという見方を示しました。報道で言われる「私的整理」は事業再生ADRのことだろう、とも述べています。
事業再生ADRは、裁判所を通さずに、銀行などの債権者と話し合って借金の返し方を見直す手続きです。すべての債権者の合意が必要なため、銀行団とスポンサー(支援企業)が協力して進めることになります。
大切なのは、私的整理が「閉園」を意味するわけではない点です。お店を開けたまま、裏側でお金の流れを整え直す手続きだと考えると分かりやすいでしょう。

世間の反応は?地元とファンの受け止め方
赤字の報道は大きな反響を呼び、SmartFLASHの記事はニュースサイトのランキング上位に入りました。
沖縄出身の芸人、スリム真栄田賢さんも赤字報道に触れ、数年先を見据えるような言葉を寄せたと報じられています。地元にとってジャングリアは、単なる娯楽施設ではなく「やんばるの未来」を背負った存在なのだと感じます。
来場者目線では、約3万円の「ファストパス」(待ち時間を短くできる有料チケット)の発売が話題になりました。また週刊文春は、来年から月曜休業になると報じています(公式発表の有無は、訪問前に公式サイトでご確認ください)。
考察:出資企業は撤退するのか?筆者の見通し
ここからは、私・夢咲未来の個人的な考えです。
地元の出資企業はすぐには離れにくい
近いうちに地元の出資企業が次々と撤退する可能性は、それほど高くないと考えています。
オリオンビールは、県内の飲食店やホテル、観光客の消費と深く結びついた企業です。沖縄北部に人を呼ぶ装置であるジャングリアから手を引けば、自社の商売の土台である観光需要にも、ブランドイメージにも影響しかねません。百貨店を営むリウボウも、観光客の増加が売り場に返ってくる立場です。
出資額の大小とは別に、「一緒に沖縄観光を盛り上げる」という看板を簡単には下ろせない。これが地元企業の立ち位置だと思います。
過去のパークに見る「運営母体が替わっても続く」道
一方で、金融面や経営の主導権は変わっていくかもしれない、というのが筆者の見立てです。
参考になるのが、長崎のハウステンボスです。巨額の初期投資が重くのしかかり、2003年に会社更生法の適用を申請しました。その後、支援企業の交代を経て、2010年にHIS傘下に入ってから黒字化を果たしています。
共通点は「施設そのものの魅力はあるのに、借金の重さが経営を圧迫した」ことです。違いは、ジャングリアは現時点で債務超過ではなく、法的整理ではなく話し合いによる私的整理が取り沙汰されている段階だという点です。傷はハウステンボスより浅い段階で手当てされようとしている、と読めます。
もう一つはUSJです。2001年の開業直後は話題を集めたものの、2年目以降に来場者が落ち込み、苦しい時期が続きました。のちに森岡氏がマーケティングを担い、V字回復を果たしたことはよく知られています。
皮肉なことに、今回はその森岡氏自身が「開業1年目の壁」に向き合う側に立っています。USJの経験から言えるのは、1年目の数字がすべてではないということです。同時に、立て直しにはアトラクションの追加など新たな投資が必要で、その資金を誰が出すのかという問題に行き着きます。
「稼ぎ方の見直し」をどう読むか
損益分岐点の100万人を「越えていた」ことは、集客がまったく足りないのではなく、投資の大きさに対して稼ぐ仕組みが追いついていないことを示していると私は考えます。
約3万円のファストパスは、そのための打ち手の一つでしょう。あくまで仮の計算ですが、1日に100人が購入すれば1日300万円、年間300日営業なら約9億円の上乗せになります。173億円の赤字と比べれば小さいものの、来場者数を増やさずに客単価を上げられる点は、借金返済を急ぐ局面では重要です。
月曜休業も同じ流れで読めます。平日の中でも来場者が少ない日を休みにすれば、人件費や光熱費を抑えて、営業日1日あたりの稼働率を高められます。これは撤退の準備ではなく、続けていくための形を探っているサインだと受け止めています。
今後の注目点
ただし、楽観はできません。イマーシブ・フォート東京が約2年で閉じたことは、刀の経営に厳しい目が向けられる理由として、しばらく残るでしょう。
今後の注目点は次の3つだと考えています。
- 大和証券グループ本社が刀への支援をどう判断するか
- 銀行団との債務整理の話し合いがまとまるか
- 2年目の来場者数が1年目を上回れるか
この3つが良い方向にそろえば、「撤退」という言葉は少しずつ聞かれなくなるはずです。
ジャングリア沖縄にこれから行く人が確認したいこと
出資企業の動きは、私たちが直接コントロールできるものではありません。けれど、来場者として確かめておけることはあります。
- 営業日・休業日を公式サイトで確かめる:月曜休業の報道もあるため、旅程を決める前に最新のカレンダーを確認しましょう。
- チケットは必要な分だけ、日付指定で:高価格帯のパスや長期のチケットを買う場合は、利用規約の払い戻し条件にも目を通しておくと安心です。
- 沖縄旅行全体に予備日を入れる:屋外アトラクションは天候で止まることもあるため、1日の余裕があると安心です。
- 強い見出しだけで判断しない:「撤退」「閉園」といった言葉を見たら、本文で誰が・何を・いつ決めたのかを確かめましょう。
チケットの価格や営業情報は変わることがあります。最新の情報は必ず公式で確認してくださいね。

まとめ:ジャングリア沖縄の撤退報道は「支援のためらい」の段階
親会社JEHDは2026年6月期に約173億円の最終赤字を計上し、9月25日に那覇市で開いた株主総会で財務状況と今後の方針を説明しました。
出資企業が撤退したという正式発表は、現時点では確認できません。ただ、メガバンク3行が当初から融資を見送っていたことや、週刊文春が大和証券グループを含む一部の追加出資見送りを報じていることから、支援に慎重な動きがあるのは確かです。
今後のカギは、大和証券の判断と、事業再生ADRのような私的整理の行方です。訪れる予定の方は、最新の営業情報を公式で確かめながら旅の計画を立ててみてください。
よくある質問
ジャングリア沖縄のチケットは今買っても大丈夫ですか?
運営会社は、顧客へのサービス提供に影響は生じないという趣旨のコメントを出しています。とはいえ、購入前には利用規約の払い戻し条件と最新の営業カレンダーを公式サイトで確認しておくと安心です。
ジャングリア沖縄は月曜日も営業していますか?
週刊文春は、来年から月曜休業になると報じています。適用時期や詳細は変わる可能性があるため、訪問日を決める前に公式サイトで確認してください。
大和証券はジャングリア沖縄から撤退したのですか?
撤退の正式発表は確認されていません。週刊文春が追加出資に応じなかったと報じている段階で、大和証券は刀を通じた間接的な関わりだと経済ジャーナリストの松崎隆司氏は解説しています。
テーマパークライター 夢咲 未来


