アドベンチャーワールド(和歌山県白浜町堅田)の「ペンギンベース」は、陸地面積を約2倍の206㎡に拡大し、8種類・約500羽という国内最大級の規模でペンギンの繁殖研究に取り組む非公開施設です。
2023年12月26日にオープンして以来、公式には非公開のままですが、その存在や役割を知っておくだけで、パークでのペンギン観察がぐっと深く楽しめるようになります。
初めてアドベンチャーワールドを訪れる方や、これから足を運ぼうと計画中の方に向けて、「ペンギンベース」がどのような施設で、どこを見ればペンギンたちの物語を感じられるのかを、丁寧にご紹介してまいります。
ペンギンベースとは?「ペンギン王国」との違いを解説
「ペンギンベース」は、2022年2月に閉館した「ペンギン王国」をリニューアルする形で誕生した施設です。
以前は観覧できる展示施設でしたが、現在は繁殖研究に特化した非公開の施設へと役割が変わりました。
パークの公式発表によりますと、コンセプトは「いのちを未来に贈り継ぐ場所」。
ペンギンたちがより自然に近いコロニー(繁殖群)を作れるように整えられた、いわば“ペンギンたちの落ち着いた住まい”のような場所なのです。
読者の皆様の中には「見られないなら関係ないのでは」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
けれど筆者としては、この非公開の舞台裏があるからこそ、パークで会えるペンギンたちの元気な姿が守られているのだと考えております。
見えない場所での丁寧な営みが、見える場所での感動につながっている。それこそが、ペンギンベースの一番の魅力だと思うのです。
陸地面積が約2倍に拡大!何が変わったのか
リニューアルにあたって、飼育エリアの陸地面積は以前の約2倍となる206㎡まで拡大されました。
これは、より大きなコロニーを形成するために必要な広さを確保するための工夫です。
さらに注目したいのが、温度を0~5℃まで設定できる環境が整えられたこと。
これにより、エンペラーペンギンやアデリーペンギン、ヒゲペンギンといった、南極周辺の極地に暮らす種類のペンギンたちにも適した繁殖環境を用意できるようになりました。
ペンギンと一口に言っても、暮らす場所の気候は種によって大きく異なります。
温暖な地域を好むフンボルトペンギンのような種類もいれば、極寒の地でなければ健やかに過ごせない種類もいます。
その違いに合わせて温度管理までできる施設は、国内の動物園・水族館の中でも限られています。実際、複数種の極地性ペンギンを同一施設内で温度別に管理できる例は、国内の類似施設と比べても珍しい取り組みだと言えるでしょう。
筆者としては、この「幅広い種類に対応できる環境づくり」こそが、アドベンチャーワールドのペンギン飼育技術の高さを物語っているように感じております。
8種類・約500羽を飼育する国内最大級の規模
アドベンチャーワールドでは、1978年の開園時からフンボルトペンギンとキタイワトビペンギンの飼育を開始しています。
そして1990年からは、自然界のペンギンコロニーを再現しようという「ペンギンプロジェクト」を本格的にスタートさせました。
その後、アデリーペンギン、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギン、キングペンギンと繁殖の実績を積み重ね、1997年には世界最大のペンギンであるエンペラーペンギンの繁殖研究にも着手しています。
2004年には、国内で初めてエンペラーペンギンの繁殖に成功。
それ以降、15羽の赤ちゃんが生まれ育っているとのことです。
現在は国内で最も多い8種類、約500羽のペンギンを飼育しており、その飼育・繁殖のノウハウは他の施設とも共有され、種の保存に役立てられています。
国内の他の水族館・動物園でも数種類のペンギンを飼育する施設は複数ありますが、8種類をまとめて、かつ繁殖研究として長期的に取り組んでいる例は稀です。こうした積み重ねを知ると、パークで出会う一羽一羽のペンギンが、長い歴史の延長線上にいる存在なのだと実感できます。
初心者の方も、ぜひ「このペンギンたちにはこんな歴史があるんだ」という視点を持って観察してみてください。見え方がきっと変わってくるはずです。

ジェンツーペンギンの名前の由来と暮らし方
ペンギンベースで育つ種類の中でも、初心者の方にぜひ注目していただきたいのがジェンツーペンギンです。
頭に巻いたターバンのような白い帯模様が特徴的で、実はこの名前には少し気の毒な由来があります。
学名の「パプア」は赤道近くの「パプアニューギニア」に由来しますが、ジェンツーペンギン自体は南極大陸周辺の島々に生息しており、パプアニューギニアとの関わりはありません。
学名記載用の標本に付ける札を取り違えてしまった、という単純なミスが原因だと言われています。
一方で、暮らし方には嬉しい特徴があります。
多くのペンギンは、抱卵中にパートナーが交代するまで長時間絶食を強いられます。エンペラーペンギンのオスは実に3カ月以上も絶食することがあるほどです。
しかしジェンツーペンギンの場合、相手が留守にする時間はわずか4~12時間ほど。毎日交代できるため、絶食の必要がないのです。
同じペンギンでも種類によって子育てのスタイルがまったく違う、というのは知っておくと観察がより楽しくなるポイントだと思います。
エンペラーペンギンの赤ちゃんに見る“イヤイヤ期”のような仕草
パークでは、ペンギンたちの日常のちょっとした仕草にも心温まる発見があります。
2026年2月、アドベンチャーワールドの公式SNSで、エンペラーペンギンの赤ちゃんが飼育員の見せるエサの魚を前に首をフリフリと振り、なかなか食べようとしない様子が投稿され、話題になりました。
飼育員が魚の大きさを変えながら何度か試み、ようやく食べてくれたというこの一幕は、まるで人間の子どもの「イヤイヤ期」のようだとして、多くの温かいコメントを集めています。
アドベンチャーワールドの広報担当者は、この投稿に寄せたコメントの中で、実はこの首を振る仕草はエサを嫌がっているわけではなく、体に入った余分な塩分を排出するための自然な行動だと説明しています。
知らずに見ると「わがままを言っているのかな」と微笑ましく感じてしまいますが、その裏には赤ちゃんの体を守るための立派な仕組みが隠れているのです。
同担当者は「これからの成長を温かく見守っていただくとともに、パークへ遊びに来ていただき、今しか見ることのできないかわいらしい姿に会いに来てください」ともコメントしています。
こうした自然な行動の意味を知っておくと、パークでペンギンの赤ちゃんに出会ったときの見方がまた変わってくるはずです。
特別公開イベント「ペンギンたちのヒミツ大解剖!」で見えるもの
ペンギンベースは非公開施設ですが、繁殖期の初期の人工育雛の様子については一時的に公開が予定されているほか、教育活動の場として一部エリアが公開されることもあります。
実際に、2024年4月20日と21日には「世界ペンギンの日」にちなんだ特別イベント「ペンギンたちのヒミツ大解剖!」がアドベンチャーワールド内で開催されました。
このイベントでは、普段は入ることのできないペンギンベースの一部が特別公開され、ペンギンを観察しながら健康管理について学ぶレクチャーや、本物のペンギンの卵を使った検査体験など、貴重な体験が用意されていました。
具体的な開催時間や参加費、申込方法については開催回ごとに変わる可能性がありますので、参加をご検討の際は公式サイトで最新情報をご確認いただくことをおすすめします。
このように、ペンギンベース自体は非公開であっても、年に一度など特別なタイミングで内部の様子を垣間見られる機会が用意されているのです。
初心者の方には、こうしたイベント情報を公式サイトなどでこまめにチェックしておくことをおすすめします。普段見えない“舞台裏”に触れられるまたとない機会になるはずです。

ペンギンベースを楽しむために知っておきたい視点
ここまでご紹介した内容を踏まえると、ペンギンベースを楽しむコツは「直接見られる場所」だけでなく、「その裏にある物語」に思いを寄せることだと筆者は考えています。
パーク内でペンギンたちと出会うとき、彼らがどのような環境で育まれ、どのような研究の積み重ねの上に今の姿があるのかを知っていると、ただ「かわいい」で終わらない深みのある体験になります。
ここで一つ、筆者の私見を交えてお伝えしたいことがあります。
オキアミという小さな生き物は、ペンギンだけでなく魚やアザラシ、クジラまで含む南極の食物連鎖を支える大切な資源です。
近年、世界各国によるオキアミ漁の拡大や、温暖化による南極の氷の減少が指摘されており、これらがペンギンたちのエサ資源にどのような影響を及ぼすのか、今後の推移が注目されています。
こうした環境の変化を踏まえると、種の保存に取り組む施設の存在意義は、これからますます大きくなっていくのではないかと個人的には感じております。この点はあくまで筆者の推測であり、ペンギンベースの取り組みそのものが直接これらの課題解決を掲げているわけではない点にはご留意ください。
家族で訪れる方は、お子様と一緒に「なぜこの施設は特別なんだろう」と考えてみるのも良い経験になりますし、ひとりで訪れる方も、じっくりと一羽一羽の仕草を観察することで、新たな発見があるはずです。
今後の見通しと筆者の所感
繁殖研究施設としてリニューアルされたペンギンベースは、今後も飼育するペンギンの行動データの収集や解析を進めていく方針が示されています。
これは単に「ペンギンを増やす」ということではなく、種としての存続、そして自然界のペンギンたちの未来にも関わる、息の長い取り組みだと言えるでしょう。
筆者としては、非公開施設という制約がありながらも、特別公開イベントやSNSでの情報発信を通じて、その営みの一端をゲストに伝え続けている姿勢に好感を持っています。
見えない部分をすべて隠してしまうのではなく、時折垣間見せることで、訪れる人々にペンギンという生き物への理解と愛着を育んでもらう。そのバランスの取り方が、このパークらしい丁寧な姿勢なのではないかと筆者は捉えております。
今後、特別公開の機会が増えていくのか、あるいは新たな繁殖の実績が報告されるのか、引き続き注目していきたいところです。
まとめ
アドベンチャーワールドの「ペンギンベース」は、2022年に閉館した「ペンギン王国」を前身とし、2023年12月26日に繁殖研究施設としてリニューアルされました。
陸地面積は約2倍の206㎡に拡大され、温度0~5℃までの環境調整が可能になったことで、極地に暮らすペンギンの繁殖にも対応できる施設となっています。
1978年からの長い飼育の歴史、1990年から本格化した繁殖研究、2004年の国内初のエンペラーペンギン繁殖成功という積み重ねの上に、現在の8種類・約500羽という国内最大級の飼育規模が成り立っています。
普段は入ることのできない場所ですが、特別公開イベントやSNSでの発信を通じて、その営みの一端に触れることができます。
ペンギンたちの何気ない仕草の裏にある物語を知ることで、パークでの時間がより心温まるものになりましたら幸いです。
よくある質問
ペンギンベースは見学できますか?
通常は非公開の施設ですが、繁殖期の初期の人工育雛の様子や、教育活動の一部エリアについては一時的に公開される予定があります。特別公開イベントの開催情報は、公式サイトなどで随時ご確認ください。
ペンギンベースにはどんな種類のペンギンがいますか?
エンペラーペンギン、アデリーペンギン、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギン、キングペンギン、フンボルトペンギン、キタイワトビペンギンなど、国内最多となる8種類、約500羽のペンギンが飼育されています。
なぜ「ペンギン王国」から「ペンギンベース」に変わったのですか?
観覧を目的とした展示施設から、繁殖研究に特化した非公開施設へと役割を変えるためです。より大きなコロニー形成に適した環境を整え、飼育データの収集・解析を進めることを目的としています。


